示談

刑事事件においては、窃盗、傷害、詐欺、痴漢、盗撮など、様々な犯罪を扱うことがあります。このような中で、刑事事件を扱う弁護士として重要な活動は示談の交渉です。

示談をすることは、刑を軽くするという意味だけではありません。
被害者に対して謝罪の意を表し、かつ、少しでも被害者への被害の回復を行うことで、自らの罪の償い、加害者の再起更生を図るという点から極めて重要な意味を持ちます。

もっとも、示談の交渉においては、専門的な知識・経験を有します。そのため、弁護士による交渉活動が重要な意味をもってくるでしょう。

示談問題とは?

そもそも、示談の意味ですが、これは、「被害者に許してもらうこと」と考えて良いでしょう。
示談をした際、示談書を作成することになりますが、「被害者は、加害者の謝罪を受け入れ、加害者を許すこととする」などの文言を入れることが多いでしょう。

ただし、示談の交渉を行うにあたっては、被害者のことを第一に考えなければなりません。
確かに、加害者としては、少しでも刑を軽くしたいという気持ちから、どうしても被害者との示談交渉を行いたいという姿勢が働いてしまいます。しかし、被害者によっては、どうしても示談をしたくないという方もいらっしゃいます。
当然ではありますが、そのような被害者に対しては、その気持ちを尊重しなければなりません。

示談を行うにあたり、被害者に対しては示談をして欲しいというのではなく、まずは、謝罪の気持ちを伝えることが重要です。
謝罪の気持ちの伝え方は、手紙、電話など様々ですが、一般的には、謝罪文を作成するということが多いでしょう。
その過程で、被害者との間で、被害弁償金を受け取ってくれるかどうか、示談を受け入れてくれるかどうかについて、交渉していくことになります。

なお、被害者としては、自己の連絡先を加害者に教えたくないということが多いです。
このようなとき、弁護士が介入し、弁護士であれば教えても構わないということで、検察官から被害者の連絡先を聞き、示談交渉ができることもあります。

以下、示談に関して問題となるケースを、具体例を交えて、ご説明致します。

示談に関して問題となるケース

示談によってどのような効果が得られるのか。

具体例

示談について、ご相談者において最も大きな関心事としては、示談することでどのような効果が得られるのか、ということかと思います。

示談は、自らの罪を償うという意味がありますので、その効果にかかわらず、行う必要がありますが、その効果や示談の方法については予め知っておく必要があるでしょう。

対処方法

例えば、起訴される前に被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分となる可能性が高くなります。もちろん、起訴するかどうかは、検察官による判断なので、必ず不起訴処分となる訳ではありません。しかし、これまでに前科前歴がなく、被害者も許しているという場合には、不起訴処分になる可能性はかなり高いといえるでしょう。

 

起訴されても、その後に示談を成立させることができれば、これまでに刑務所での服役経験がなければ、執行猶予付き判決となる可能性が高くなります。もちろん、判決の内容は裁判官が決するわけですが、被害者が許しているかどうかは、刑の量刑判断に大きな影響を与えることは間違いありません。

このように、示談が成立するかどうかは、刑の処分に大きな影響を及ぼすことになります。

 

また、示談をすることにより、民事上の債権債務についても抜本的な解決が可能となります。つまり、被害者に対して加害者は民事上の損害賠償責任を負うことになるのですが、一定の金額を解決金として被害者に支払い、示談することで、その民事上の問題も解決することができるのです。

 

もっとも、示談書には、「被害者と加害者は、本示談書に記載のほか、何ら債権債務がないことを相互に確認する」という清算条項を設ける必要があり、この条項を忘れてはなりません。このような条項を入れた示談書を締結することで、上記のような抜本的解決が可能となるのです。

 

示談できるかどうかは、被害者によるところが大きいのですが、その効果は刑事上も、民事上も大きいものですから、自己の償いも含めて、示談の交渉は可能な限り行うべきでしょう。

被害者が示談に応じてくれない場合にどうするのか。

具体例

弁護士が介入しても必ず示談ができるというわけではありません。示談が成立するかどうかは被害者の意思によります。

もし、被害者が示談に応じてくれなかった場合に、どのように対処すれば良いのか、問題となります。

対処方法

まず、被害者が示談はできない、つまり「許す」ことはできなくとも、被害弁償金を受け取るだけであれば可能という場合があります。そのため、示談が難しくとも、被害弁償金の受け取りについては、被害者に対して申入れをすべきです。

 

被害弁償金支払いの効果についてですが、確かに、被害者が「許す」というわけではないので、示談よりもその効果が大きいとは言えません。しかし、被害者への被害回復及び被害者への償いをするという意味で、被害弁償が可能であれば、必ず行うべきでしょう。

 

もし、被害弁償金も受け取ってくれない場合ですが、そのときは、贖罪寄付を行うことを検討します。贖罪寄付とは、被害者のいない刑事事件や、被害者との示談ができない刑事事件などにつき、改悛の真情を表すための手続です。量刑の判断材料としては、大きなものとは言えませんが、反省・謝罪の気持ちを表すという意味では有益でしょう。

 

被害者との交渉においては、被害者の気持ちは最大限尊重しなければなりません。そのため、被害者の気持ちを汲み取り、可能な限りの対応を行うことになります。

被害者としては、示談交渉の際にどのように対処すれば良いのか。

具体例

示談は、被害者側にとっても、その交渉が重要となります。

被害者は、犯罪により多大な被害を被っているわけですから、示談をするにあたっても、その被害を填補するだけの示談金を支払ってもらう必要があります。

しかし、加害者側から提示された金額があまりに低い場合、被害者としては、どのように対処すれば良いのか、問題となります。

対処方法

被害者としては、被害回復の十分な填補がなされないのであれば、当然のことながら、示談に応じる必要はありません。確かに、被害者側としては、その後の回収可能性を考慮して、ある程度低い金額であっても示談をするという選択をすることも考える必要があります。しかし、到底納得ができない金額であれば、示談に応じる必要のないことは当然のことです。

 

示談ができない場合、被害者としては、加害者に対し、民事訴訟による損害賠償請求訴訟の提起を検討することになります。確かに、勝訴判決を得ても回収できないということは多々あります。しかし、加害者が不動産を所有している、会社に勤務しているという場合には、ある程度、回収可能性があると考えて良いでしょう。

 

損害賠償請求訴訟を提起するための資料として、刑事事件記録の閲覧、謄写を検討します。刑事事件記録の閲覧、謄写の請求は、刑事事件が確定した後、第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官に対して行うことになります。全ての記録が閲覧、謄写可能という訳ではありませんが、基本的に、民事訴訟を提起するにあたり必要な証拠が手に入ると考えて良いでしょう。

 

ただし、不起訴処分により事件が終了している場合には、刑事事件記録は、交通事故における実況見分調書などを除き、原則として開示対象にはなりませんので(刑事訴訟法47条参照)、注意が必要です。

 

示談の交渉においては、被害者側としても、その損害額や加害者からの回収可能性などを考慮しながら進める必要があります。

示談まとめ

示談とは加害者側、被害者側双方の同意がなければ成立しないものです。しかし、被害者への謝罪の意を表し、被害者の被害の回復を行うことは、加害者にとって、今後の再起更生を図る上で極めて重要な手続です。

また、被害者においても、加害者に対して反省を促し、自己の被害回復を図るという点で、示談の交渉は重要な手続きといえるでしょう。
示談の交渉にお困りの方は、お気軽にご相談いただけますと幸いです。

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