遺言

遺言は、一般的には「ゆいごん」と言われることが多いのですが、法律的には「いごん」と言います。
遺言は、被相続人の最後の意思表示であり、相続人が遺産を巡って争うことを未然に防止することができますので、一般的に広く利用されている制度といえます。
しかし、遺言には厳格な要式が求められており、記載する内容についても、専門的な知識を要します。

遺言問題とは?

遺言とは、人が自分の死後に効力を発生させる目的で、あらかじめ書き残しておく意思表示のことを言います。 遺言の作成を考えておられる方におかれましては、次のような心配をされている方が多いのではないかと思います。

①世話をしてくれた子どもに優先的に遺産を相続させたい。
②内縁の妻に自分の財産を渡したい。
③子どもの兄弟仲が悪いので、将来、自分の相続で争って欲しくない。
④生前に多額の財産を贈与した子どもに、遺産を渡したくない。

遺言には、大きく分けて、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言とは、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、押印して作成する遺言です。
自筆証書遺言は、必ず遺言者自身が書かなければなりませんが、特に、用紙に決まりはなく、紙、ペン及び印鑑(指印も可、平成元年2月16日付最高裁判決)があれば、いつでも作成できるものなので、遺言の中では最も簡便な方法です。なお、民法(相続法)の改正により、自筆証書遺言において、相続財産の全部または一部の目録(財産目録)を添付する場合、財産目録については自書する必要がなく、ワープロ等で作成することが可能となりました。
しかし、一般の方が遺言書を作成する場合、遺言には厳格な要式が求められるため、その要式に沿っていなければ無効になってしまう恐れがあります。
また、内容が不明確な遺言を残すと、その内容の解釈をめぐり、かえって相続人間の紛争が悪化するリスクがあります。
さらに、いつでも作成することができることから、結果として、何通も遺言書を残してしまうというケースも考えられます。
この場合、前の遺言書が後の遺言書と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされ、後の遺言の内容が有効になります。
しかし、このような何通も遺言書がある状態では、相続が生じた際、混乱が生ずることも多いです。
自筆証書遺言の簡易に作成できるという点はメリットでもあり、デメリットでもあるのです。

これに対し、公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言です。
公正証書遺言のメリットの一つは、自筆証書遺言で必要とされる検認手続が不要となるということです。
検認手続とは、家庭裁判所が遺言書の存在や内容を確認するために調査する手続であり、このような裁判所での手続を省略できるということは公正証書遺言の大きなメリットです。
また、公正証書遺言は、公証人により作成されるので、信用力が非常に高く、無効となるリスクは、自筆証書遺言と比べると非常に低いと言えます。
さらに、公正証書遺言の原本は、公証役場に保管されるので、偽造等の恐れはありません。

以下、遺言作成において、どのような場面で問題となるのかについて、具体例を交えて、ご説明致します。

遺言において問題となるケース

遺言の不備により、財産を相続できない。

具体例

自筆証書遺言において、法律で求められている要式の不備(印鑑が押印されていないなど)により、遺言が無効になってしまうということがあります。

また、遺言の内容において、相続させる財産を「預貯金」とだけ記載し、その他の財産について記載がなく、株式や国債などを相続できないということもあります。

対処方法

遺言者が亡くなった後では、遺言の内容を変更することはできません。

そのため、遺言の作成には、その要式に加え、記載内容について、慎重に検討しなければなりません。

くぬぎ経営法律事務所は、遺言作成についてのご相談を受けた際、要式に間違いがないこと、検認手続が不要となること、信用力が非常に高いことなどのメリットを考慮して、公正証書遺言の作成をお勧めしております。

また、遺言の記載において、相続する財産に漏れがないよう、「その他一切の財産を相続させる」という内容を記載することもお勧めしております。

いずれにせよ、遺言の要式や内容には、絶対に不備があってはなりませんので、注意が必要です。

遺言内容が適切に実施されるのか不安である。

具体例

遺言書を作成したものの、遺言者が亡き後、その遺言の内容のとおりに財産が分配されるのか不安である、ということがあると思います。

遺言の内容が履行されるよう、事前に対策を講ずることも重要です。

対処方法

遺言の内容が確実に履行されるよう、遺言執行者の選任について、遺言内容に残すことをお勧め致します。

遺言執行者が選任されていれば、不動産の登記、預貯金等の金融資産の解約等をスムーズに行うことができ、確実に遺言の内容を履行することができます。

仮に、遺言に遺言執行者の選任の記載がなくとも、相続人等により、家庭裁判所に遺言執行者の選任を求めることができますが、相続人等の負担をあらかじめ軽減するために、遺言執行者を選任しておいた方が良いでしょう。

遺言者が認知症かもしれないが、遺言を作成することができるか。

具体例

遺言を残したい場合でも、遺言者が高齢の場合、認知症になっている可能性があり、その場合に遺言を残せるのか、というご相談があります。

このような場合、遺言書を作成しても、後に、その遺言が無効であると他の相続人等から主張される可能性があります。

そのため、事前の防止策を講ずることが不可欠です。

対処方法

遺言書を作成するには、遺言を作成する能力(遺言能力)がなければならず、遺言能力がない場合、その遺言は無効になってしまいます。 特に、長谷川式簡易知能評価スケールにおいて、点数が20点より少ない場合には、注意が必要です。

もっとも、長谷川式簡易知能評価スケールでの点数が低く、認知症であったとしても、遺言者が事理を弁識する能力を一時回復するということがあります。

その場合には、医師二人以上の立会いの下で、遺言を作成することも可能となりますので、遺言書を作成するには医師の協力の下で行うことが不可欠です。

内縁関係にあるが、内縁の夫・妻の財産を相続できるのか不安である。

具体例

内縁関係を続けているものの、夫・妻の遺産を相続できるのか不安である、ということがあると思います。

ここで、内縁関係にあり、何十年も同居していたとしても、法律上は、相続人ではありませんので、遺産を相続することは原則できず、遺産を相続するのは、亡くなった方の法定相続人ということになります。

そのため、内縁関係においては、事前の対策が不可欠です。

対処方法

内縁関係においては、相続関係は生じませんので、お互いに遺言を残すべきです。

遺言がない場合、例えば、内縁の妻名義の預金口座に自分のお金を預けておくと、その妻が亡くなったとき、その預金口座のお金は相続人のものになってしまうので、原則、引き出すことができなくなってしまうからです。

遺言書の作成にあたり、注意しなければならないのは、共同遺言が禁止されているので、夫婦が同一の書面で遺言書を作成してはなりません。

遺言としては、検認手続を不要とする公正証書遺言が良いでしょう。

なお、万一、遺言を残しておらず、内縁の妻名義の預金口座に自分のお金がある場合、相続人を相手として、預け金返還請求訴訟、不当利得返還請求訴訟等を提起せざるを得ない可能性があります。

遺言まとめ

遺言書を作成することは、後の混乱等を避けるためには不可欠であります。
しかし、適切な手続を経なければ、その遺言自体の効力が争いとなり、かえって紛争が悪化することにもなりかねませんので、慎重な対応が不可欠です。

くぬぎ経営法律事務所へのお問い合わせはこちらから

お電話でのご相談03-6458-3845業務時間 9:30~17:00メールでのご相談info@kunugi-law.com

くぬぎ経営法律事務所へのお問い合わせはこちらから

お電話でのご相談03-6458-3845業務時間 9:30~17:00メールでのご相談info@kunugi-law.com