寄与分 相場

寄与分 はじめに

寄与分 療養看護型 画像

相続が生じたとき、原則として、法定相続分に基づき、各相続人に遺産を分配することになりますが、特定の相続人に寄与分が認められるケースがあります。

寄与分とは、相続人が相続財産の増加や維持において、特別に貢献した場合につき、その寄与度に応じて相続人の相続分を増加させるという制度です。

相続人の中には、①被相続人に対して多額の援助を行ってきた相続人、②これまで被相続人の家業を無給で手伝ってきた相続人、③被相続人の介護等に尽くしてきた相続人など、被相続人のために、他の相続人よりも多大な貢献をしてきた相続人がいることがしばしばあります。

このような貢献に対して全く考慮することなく、法定相続分に応じて分配するとなれば、貢献しなかった相続人と比べて、著しく不公平であると言わざるを得ません。このような不公平を是正する制度が寄与分という制度です。

本ブログにおいては、寄与分とは、どのような場合に、どの程度認められるのか(寄与分の相場)などにつき、相続法の改正を含めて、ご説明したいと思います。

 

寄与分の類型

寄与分が認められる場合やその程度は、個別の事案により様々です。そのため、相場と言っても一概にその額をはっきりさせることはできません。もっとも、寄与分が認められる場合には、いくつかの類型に分類されます。以下、その類型ごとに、寄与分がどのような場合に、どの程度認められるのか(寄与分の相場)などについて、ご説明を致します。

 

寄与分 家業従事型

まず、「家業従事型」と呼ばれる寄与分についてご説明致します。家業従事型とは、例えば、被相続人が農業や個人商店などの家業を営んでいたところ、相続人が無給もしくは極めて少額の給料により、その家業を手伝ってきたような場合が当てはまります。(なお、相続人が一般的な給料を受け取っていたような場合には、寄与分としては認められない可能性が高いでしょう。)

家業従事型の寄与分の計算方法は、一般的に、「寄与した相続人が通常得られたであろう給付額×(1-生活費控除割合)×寄与した期間」により算出することになります。

このうち、「通常得られたであろう給付額」とは、家業と同種同規模の事業に従事する同年齢層の給与額が参考になります。その際、賃金センサスやその他統計資料を参照することが多いでしょう。

生活費控除割合とは、生活費相当分を意味します。事案によりますが、一般的には50パーセント程度であることが多いでしょう。生活費相当分について控除される理由は、家業従事型の場合には、無給ないし極めて少額の給料により家業に従事する代わりに、被相続人から生活費の援助や住居の提供等を受けていることが多いからです。もちろん、全ての事案に対して該当するわけではありませんが、家業従事型における寄与分の算定においては、被相続人から生活費の援助や住居の提供等があったか否かについては確認する必要があるでしょう。

 

寄与分 金銭等出資型

次に、「金銭等出資型」と呼ばれる寄与分についてご説明致します。金銭等出資型とは、金銭等を被相続人に対して出資したことで、被相続人の財産の維持形成に寄与したことを寄与分として評価するものです。何らかの価値ある財産を被相続人に対して出資したことを寄与分として評価するものですから、他の寄与分の類型より客観的な立証が可能となる場合が多いといえるでしょう。

もし、①被相続人に対して多額の金銭を援助した場合、②被相続人に対して不動産を贈与した場合、③被相続人に対して無償で建物を使用させていた場合(使用貸借)、④被相続人に対して金銭を無償で融資した(貸し付けた)などの事情がありましたら、この「金銭等出資型」の寄与分を検討します。

もっとも、被相続人に援助した金銭等が全て寄与分として評価されるわけではありません。相続開始時においても被相続人の財産に影響があるような、ある程度まとまった財産である必要があります。

「金銭等出資型」の寄与分の具体的な金額(相場)についてですが、①多額の金銭を援助した場合には、「援助した金額×貨幣価値変動率」により、②不動産を贈与した場合、「相続開始時の不動産の評価額」により、③不動産の使用貸借の場合、「相続開始時の賃料相当額×使用期間」により、④金銭融資の場合、「利息相当額」により算出することになります。

もっとも、上記方法により算出された金額が、必ずしも寄与分の額になるという訳ではありません。どの程度を金額が寄与分として認めるのかについては、「裁量割合」を乗ずることで、個別の事案により定めることになります。

寄与分を主張する側としては、金銭等を出資したことを裏付ける証拠を収集し、また、出資するに至った事情を詳しく説明するなどして、被相続人の財産の維持・形成に寄与してきたことを可能な限り主張、立証することが重要です。

 

寄与分 療養看護型

寄与分 家業従事型 画像

「療養看護型」と呼ばれる寄与分についてご説明致します。被相続人が病気で療養中の場合、本来であれば、被相続人は自らの費用で看護する人を雇う必要があります。相続人が被相続人の療養看護をしたことで、被相続人がその看護費用の支出を免れ、被相続人の財産の維持、形成につながったと認められる場合には、「療養看護型」の寄与分が認められる可能性があります。

もっとも、「療養看護型」の寄与分が認められるには、相続人と被相続人との身分関係から通常期待される程度以上の看護がなされていなければなりません。そのため、「療養看護型」の寄与分が認められるには、以下に述べるような事情が必要となります。

まず、被相続人が、療養看護を必要とする病状であったということが必要となります。つまり、療養看護型の寄与分が認められるには、相続人がどのような看護を行ったのか、ということだけで判断されるのではなく、被相続人がどのような病状にあり、どのような看護が必要であったのか、ということが非常に重要な要素となります。一般的には、介護保険における「要介護2」以上の状態にあることが目安とされています。「要介護2」であったことは、被相続人の診断書、カルテなどから証明することになるでしょう。

また、相続人が行ってきた療養看護とは、①無報酬またはこれに近いものであること、②相当期間(1年以上)に及んでいること(継続性)、③相当な負担を要するものであること(専従性)を要します。そのため、「療養看護型」の寄与分が認められるハードルは高いのですが、もし、これらの事情が存在する場合には、「療養看護型」の寄与分を検討すると良いと思います。

「療養看護型」の寄与分の算出方法ですが、一般的には、介護保険における「介護報酬基準」などを用いることになります。ただし、介護報酬基準などに基づく報酬相当額そのものが寄与分として認められるというわけではなく、裁量割合(0.7程度)による減額がなされることが多いです。算出の数式としては、「介護報酬基準等に基づく単価×療養看護の日数×裁量割合」により算出することが多いでしょう。

 

その他の寄与分の類型

これまで代表的な寄与分の類型を述べてきました。その他にも、相続人が被相続人を扶養し、被相続人が出費を免れたという「扶養型」、相続人が被相続人の財産を管理することにより、財産の維持形成に寄与したという「財産管理型」などの寄与分の類型があります。

これらの寄与分も、相続人と被相続人との身分関係から通常期待される程度を超える特別の寄与でなければなりません。例えば、「扶養型」においては、相続人が扶養義務の範囲を超えるような扶養料を負担してきたような場合、「財産管理型」においては、相続人が賃貸不動産を管理したことにより、被相続人が賃貸管理費用の支出を免れたような場合には、寄与分として認められる可能性があるでしょう。

 

寄与分に関する相続法の改正(特別の寄与)

既に述べたように、被相続人に対し、無償で介護等してきた相続人であれば、「療養看護型」
の寄与分が認められ得ることになります。しかし、従前の寄与分の制度では、相続人の配偶者は、被相続人の(推定)相続人ではないことから、仮に被相続人のために何らかの貢献をしていても、その貢献度に見合った財産を受け取る制度がなかったため、不公平な結果が生じていました。

このような不公平を是正するために、この度の相続法の改正により、「特別の寄与」(特別寄与者)の制度が設けられました(民法1050条)。

「特別の寄与」の制度とは、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(特別寄与者)は、相続の開始後、相続人に対して寄与に応じた額の金銭の支払いを請求できるというものです。

被相続人の親族とは、①六親等内の血族、②配偶者、③三親等内の姻族を意味します(民法725条)。そのため、相続人の配偶者も親族に含まれますから、相続人の配偶者が被相続人のために、無償で療養看護等に尽くしてきた場合、この「特別の寄与」の制度を利用することになります。

ただし、特別寄与者は家庭裁判所に「特別の寄与に関する処分の審判」を申立てることができますが、その審判の申立期間は、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから6月以内又は相続開始の時から1年以内という非常に短い間に行う必要がありますので、注意しなければなりません。

 

寄与分 相場のまとめ

これまでどのような場合に寄与分が認められるのか、認められるとしてどの程度であれば認められるのか、その相場などについて、類型ごとにご説明をしてきました。寄与分が認められるかどうかは個別の事案によります。しかし、相続人間においての不公平は可能な限り是正されるべきであり、そのための「寄与分」という制度は極めて重要といえます。

寄与分に関してお悩みの方は、お気軽にくぬぎ経営法律事務所にご相談いただければ幸いです。

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